2023WBCは、大谷翔平選手を中心にすべての選手が活躍して、日本の優勝に終わりました。
大会を通して注目されたのが、栗山監督の監督としてのあり方です。
明らかにこれまでの野球の監督像とは違った指導者でしたよね。
そして、これから野球の監督をする人が考えるべき監督像、チーム作りを見せてくれたように思えます。
今後の野球監督はどうあるべきか。その大ヒントを教えてくれたように思います。そしてこの本は、その栗山監督が出した本です。
これまでの野球の監督のイメージ
君たちにとって、俺はどんな監督かな?
え?そ、それは、、、良い監督ですよ?
なんで最後が「?」なんだよ!じゃあ、質問を変えて、どんな監督なら「ついていきたい」と思えるかな?
えっと、優しくて、自分の話をよく聞いてくれる監督ですかね。
ん~そうか。(俺自身で自分を振り返った時、どうしても「よく話を聞く」はないかもしれんな)
以前の野球はスポコンの代名詞でした。
そのすべてを取り仕切る監督のイメージって、このような感じではないでしょうか。
- チームの絶対的な存在で誰も意見できない
- プレーが悪ければ怒られる
- プレーが良くても褒められない
- 罰走
- 最悪体罰
いわゆる昭和の頑固おやじって感じですよね。こんなのでやる気なんて上がるか!!
体罰なんて時代錯誤も良い所ですが、令和の時代にいるのも確か。
悪いプレーを原因も指摘せずにただ怒る。結果が出なければ罰走。二言は許さない。
科学技術が進歩した現在、いかに理論的・合理的に指導するかは監督として必須の能力です。
監督から押さえつけることが無理である以上、大切なのは自主的な選手を育ていること。
その点、栗山監督の指導者論は、アマチュアの監督である私たちも学ぶべきだと考えます。
WBC栗山監督の最側近白井コーチが見た監督としてのあり方
今大会、栗山監督の熱烈な要望でヘッドコーチを務めたのが白井ヘッドコーチでした。
その白井コーチが、大会を通して感じた栗山監督の監督像や指導・方針を話していました。
大切なことは、選手の主体性を引き出し、任せることです。
なお、白井コーチはアメリカでコーチングについて大変勉強されています。
話の中では、そのコーチングも含めて紹介されていましたので、以下にその詳細が書かれた本を紹介します。
選手の「こうしたい」をリスペクトする
白井コーチは、アメリカで最先端のコーチングを学んでいます。
その中で学んだことは、アメリカでは選手の「こうしたい」を最大限リスペクトするということだったそうです。
では、栗山監督はどうなのかというと、まさにそのコーチングを実践していたとのことでした。
監督が選手像を勝手に決めるのではなく、どんな選手になりたいのかを尊重する。
例えば長距離を打てるようになりたい選手がいたとしましょう。
なのに監督が「お前は身体が小さいから、バットを短く、単打を打て」は、まさにトップダウンの指導です。
「こうしたい」は、選手の自主性の芽生えであり、最速の成長を促すものだと考えましょう。
と考えると、「こうしたい」と思わせることが指導者の力量であり、あり方です。
信じて任せる
1次ラウンドのチェコ戦で、大谷選手が三盗をしました。
このとき、大谷選手に対してサインを出したわけではなく、アイコンタクトでコーチャーに「行くよ」と伝えたそうです。
そして、栗山監督は首脳陣の中で「選手が大丈夫っていうならOKを出してあげて」と決めていたそうです。
なかなか少年野球やジュニアでは見ないパターンですよね。
アマチュアはほとんどが、監督のサインでしか動きません。
そこには、選手の力を100%信じる監督像があり、だからこそ、選手の自主性が出てきます。
というか、アイコンタクトでやり取りができる、首脳陣と選手との信頼関係にも驚きです。
信じてもらえているからこそ、選手も期待に応えようと頑張れる。
監督のサインで動くチームは、これまでの作業ロボットとしましょう。
監督の思い描く作戦を熟知し、自主的に動くチームは、いわゆるAI搭載ロボットです。
さて、強いチームはどちらでしょうか?
選手の考えを聞いた上で正面から向き合う
選手を100%信じると言っても、伝えるべきものは伝えなければなりません。
選手が自主的であることと、自分勝手であることは違います。
チームの軸や柱は、監督の中で持ってあるべきで、それは伝えなくてはなりません。
その時はごまかさず、上から圧力をかけて有無を言わさないようにするわけでもなく、正面から向き合いましょう。
誠心誠意自分の思いを伝えると、時間がかかったとしても相手には伝わります。
じっくり選手の話を聞いた上で、自分の目指すチーム像と選手像を伝えましょう。
選手は「ここまで俺のことを考えてくれるなら」となるはずです。
例え折り合いがつかなくても、選手は「きちんと話を聞いてくれる監督」と思うでしょう。
選手のこういった思いは、次につながります。
チームとしてのあり方
サインを出すだけが監督ではありません。
チームの雰囲気づくりも大きな仕事であり、むしろ、そちらの方が重要度は高いのではないでしょうか。
ここでも栗山監督は、前時代的な「恐怖政治」とは対称的な、選手を一人ひとりを大事にする「民主政治」を行っています。
縦のつながりから横のつながりへ
このWBCでは、早期にダルビッシュ有選手が合宿に合流し、後輩の指導にあたっていました。
時には食事会を開き、チームが一丸となれるよう率先して働きかけていたことが印象的です。
これにより、大先輩と後輩という「縦のつながり」から、選手同士の「横のつながり」が生まれました。
若手にとって、これほどやりやすい環境はないのではないでしょうか。
もちろん、下が上の人をなめて良いといことではなく、ここでは、上の人が下の人の所まで降りてくることを指します。
栗山監督がつくったチームは、いわば、誰もが味方に対してプレッシャーを感じないチームのような気がします。
監督や大先輩に対するプレッシャー(話しづらさ)は、戦う上で無駄なプレッシャーですよね。
何を言っても大丈夫な雰囲気作り
栗山監督がつくった今回のチームは、まさにこの一言に集約されています。
監督は自分の考えを尊重してくれ、大先輩も積極的につながろうとしてくれる。
これほど誰が何を言っても安心できる環境はないでしょう。
自分がやりたいことは、誰かに伝わるし、監督は目指している方向性を伝えてくれます。
先輩は色々教えてくれるし、面倒見が非常に良くて、聞けば教えてくれます。
このような雰囲気は、野球だけでなく、すべての集団の中で効果的に働くものです。
そしてこれこそ、令和の野球を指導する監督が目指す一つのあり方なのではないでしょうか。
すでに変化は始まっている
野球指導者関係の記事を見ていると、さまざまなチームで、根性論と独裁的な体制を否定するやり方が実践されています。
もちろん、根性が必要な時もあるとは思いますが、その裏には合理性があるべきです。
栗山監督は、これからの指導者としてあるべき姿の一つを教えてくれました。
さて、指導者である私たち大人が、「自分はこうだった」ではない、新しい監督としてのあり方の下、野球を教える必要があるようですね。