この記事では、軟式の場合のバントのコツを紹介しています。
初心者にとってバントのコツはつかみにくいもの。試合でサインが出た時は緊張する場面ですよね。
「自分はアウトでもいいから」なんて気休めにもなりません。
そんな方に朗報!コツさえつかめば、軟式のバントは簡単です。バントの基本から、軟式ならではの考え方を紹介します。
なぜバント?バントのコツを掴んでおくべき理由
(ノーアウト二塁。おそらくここはバントの場面だよな…)
(サインの動作)サッサッサ…(バントをやれ。)
(やっぱりか。苦手なんだよな~バント。というか怖い。)──スカッ!やっぱり空振りだ。
な~にやってんだ!自分はアウトでもいいんだぞ。(サインを出す)サッサッサ…(バント)
(え~!スリーバントですか!絶対無理)──ズバン。ほらやっぱりバントできないよ。
このような光景に見覚えはありませんか?
監督によってはスリーバントというリスクのある場合でも「バントをしてほしい」場面があります。そして経験上その場面は初心者が打席に立っているときが多いです。
しかし、初心者によっては「バントが怖い」という子どももいるはずです。
さて、ではなぜバントなのかを考えてみましょう。
バントは弱者が強者を倒すために必須の作戦
現在の甲子園などを見ていると強豪校でも、これまで鉄板であった「バント」をしないところが増えています。
おそらくこの流れは今後も変わることはないだろうと思います。
しかし、初心者ばかりのチームを率いてきた僕の感想は「弱者が強者を倒すためにバントは必要」です。
なぜなら強豪チームのピッチャーは打てないから。
一方バントができるとノーヒットのなのに勝てることもあります。ノーヒットで相手を崩す上で、バントは重要な役割を果たすのです。
バントでランナーを進めてプレッシャーを与える
弱いチームでなくともバントをして、ランナーを進めて勝つ強いチームも存在します。
無死一塁。ここでバントが成功できれば一死二塁。
ヒットが一本出れば一点が入る可能性があります。しかし打たせてゲッツーになればチャンスは消えますよね。例えゲッツーにならなくても、内野ゴロなら一死一塁になることもあり得ます。
あまり打率が高くないチームが勝つには少ないランナーをよりホームベースに近づけることが重要です。
僕は状況によっては、一死二塁でもバントをします。(一死一塁はあまりしません)
二死三塁ならば、パスボールやワイルドピッチで一点です。他力本願とは考えません。
これは、プレッシャーを与えるためだと思っています。だからこそ、バントは重要視しています。
バントのコツをつかむ=選球眼の向上
バントのコツを掴んだ選手は、選球眼やボールを見極める力がつきます。
- ボールをよく見る
- ボールは引く、ストライクはバントするとはっきり意識できている
- 変化球も手元まで呼び込んで見るくせがつく
バントをしようとする初心者は、しっかりボールを見ようとします。バットに当てなければいけないですからね。
その選球眼や見極めの力は、バントを試合でせずとも、必ずバッティングにつながるのです。
バントをする指導者とのめぐり合わせ
僕たちが教えている子どもたちが高校や大学で野球をするとしましょう。
そのチームがバントを多用するチームだった時、バントを練習してこなかった選手はメンバーから外されることも考えられます。
これほど指導者として悲しいことはありません。
だから、小学生や中学生の段階で、指導者は選手をある程度以上バントができるようにするべきと思っています。
だからバントを教えてあげましょう。
軟式のバントのコツその1:基本の構え
監督。やっぱり僕にはバントは難しいです。
まあ、気持ちはわからんでもないが、まだ諦めるには早すぎる。基本の「き」からもう一度確認するぞ。大丈夫。基本の構えさえ押さえておけば、あとはボールを捕まえるだけだ。
大抵初心者の場合、基本的な構えができていません。
よくあるのは
- 目線が高い(バットの高さと目の高さが離れすぎている)
- 両手の位置がおかしい
- 膝(尻)が深く落ちていない
- 動きながらするセフティーバントのようになっている(セフティーは別の記事で説明するよ)
これが初心者でありがちなバントの構えです。逆に言えばこれだけを改善すれば、バントが「怖い」と思うことはなくなるはずです。
100発100中のバントができればバントが楽しくなるし、ヒットが打てなくてもチームに貢献できます。
アウトなのに周りの友達や監督もほめてくれるのです。まずは基本的な構えを見直しましょう。
膝(腰の位置)を落とす
バントの時はボールを下から見るをイメージしてください。
このコツがわかれば、かなりバントを改善できます。方法は簡単です。
キャッチャー側の足(右バッターなら左足)の膝を地面につけてください。
これだけです。初心者は最悪これだけで十分。
ついでにピッチャー側の足の膝は地面にはつけないでくださいね。もちろんルール上何の問題もありません。
ストライクゾーンはボックスで最初に構えたときの、胸(実際は肘の位置くらい)~膝までと考えられます。
だから、投球後どのような構えをしてもまったく問題がありません。
ボールを下から見るために目線を下げるにはこれほど手っ取り早く簡単な方法はないと思っています。
もちろんこれでは「絶対バントしますよ」と宣言しているようなものなので、バントに慣れたら変えるべきですが。
もし立ったままで構えるのであれば、若干がに股にして最低限構えたときの胸の位置に目線が来るまで、腰を落としてください。
この時足の位置は以下の2つで、やりやすい方を選んでください。
僕個人としてはあまり足は開きすぎない方(右側)がアウトコースに手が届くのでおすすめしています。
両手の位置と握り方
以下の点が両手の位置と握り方の大事なことです。(右バッターを例に)
右手
- なるべくミートポイントの近くを持つ(大抵メーカーのロゴ部)
- OKの指で握る
- 手のひらをしっかりピッチャーに向ける
左手
- グリップテープ上部を握る(こっちはOKでなくてよい)
大体初心者は右手の位置がバットの下(グリップに近い位置)過ぎています。
これではバットに当てるのが難しくなります。イメージとしては「右手でボールを掴む」です。
僕は中学生の時に監督にこう教えてもらって、10回サインがあれば3回しか成功できなかったのが9回は成功できるほど得意になりました。
だからこそ、ボールを捉えるミートポイントに右手が近い方がバットに当てやすいを覚えておいてください。
気を付けたい初心者がやるバントの失敗例
一番ありがちです。
初心者は右手の指全部でしっかりバットを握ってしまうのです。
バントには一切力はいりません。指すべてでしっかり握れば無駄な力が入る上に、バントをするコースが決めにくいです。
だから指をOKの形にして力が入らない状況を作りましょう。
しかしそれだけだと力負けをするので、右手の手のひらをピッチャーにしっかり見せれば力負けしません。
また左手はグリップテープの一番上を持つことも重要です。
左手はコースを決めるための手です。この左手を
- 前に突き出せばファースト側
- 胸に引き寄せればサード側
に転がってくれます。これだけで両手の位置と握り方はOKです!
監督がよく言う「ボールを掴め」にそんな過去があったとは!
うーん。ぶっちゃけ指はかなり痛かったがな…それでもこの経験でバントは得意になったぞ。まあ、バッティングが良すぎて、バントの機会があまりなかったがな!
この記事ではバントについて紹介しているので、その発言は控えた方が良いかと…
目線はバットと同じ高さ
先ほどの「膝(腰の位置)を落とす」でも「胸の位置の目線が最低限」と紹介しました。
できれば目線はバットと同じ高さであってほしいと思います。
下の写真は犠打533で歴代1位のバントの名手、元巨人の川相選手のバントです。
引用:https://www.iza.ne.jp/kiji/sports/news/171108/spo17110808450034-n1.html
バットと目線がほぼ同じなのが分かると思います。
引用:http://blog.livedoor.jp/rock1963roll/archives/3943535.html
さらにこの写真では先ほどの「膝をつく」を実践しているのが分かります。いかに目線を下げることが大事かがわかりますね。
軟式はとくにボールがバットにはじかれやすく、確実にゴロにしないと小フライになる可能性が高いため、とにかく「低く」を意識しましょう。
また初心者の場合陥りやすいのがバットと目の距離が遠すぎることです。
基本は下の図のように、ボール⇒バット⇒目が平行に並ぶ意識でいると、バントの確率はぐっと上がります。
これができればバント名人っすね!
そうだな。最初のうちは意識してもなかなか形が作れていない。転がる、転がらないよりもまずは形を作ることに専念しよう。
確実に転がすにはどうすればいいですか?
おおそうだ。忘れてた。確実に転がすには、右手の位置が左手の位置よりも高くなるようにしよう(低めのボールはそうはいかないけれど)。これが「バットヘッドを立てる」ということだ。そうした方がボールを見やすい。
バントのコツその2:軟式ならでは
軟式、硬式のボールの違いは、バントのコツの違いと直結します。
ぶっちゃけ硬式の方がバントは簡単です(怖いですが)。軟式ならではの特徴を知って、確実にランナーを送れるようにしましょう。
軟式ならではの反発力
軟式は硬式に比べると反発力があるので変に押したり引いたりせず、そのまま当てることを意識しましょう。
これが軟式でバントをするコツです。軟式は硬式に比べると、ゴム素材であるので変形します。
- 予想の数倍ボールが反発する
- 打球の方向が思わぬ方向に行く
- 小フライになりやすい
これが軟式の特徴で、バントするときに気を付けるべきことです。
この中でも最悪なのが、小フライになることですよね、そうならないためには、バットの真ん中~下側にボールを当てる必要があります。
しかし、初心者にそれができるわけありません。
まして、バットの下すぎると今度はキャッチャーの目の前で大きくバウンドします。
「ぜひランナーをアウトにしてください」と言わんばかりの打球です。これではバントの意味がありません。
軟式のバントのコツは「押しも引きもしない」
バントをするときに勢いを殺すためにバットを引いたり、逆にプッシュバントにするためバットを押したりすることがあります。
しかし、コースさえ間違わなければバントは成功するので、軟式で勢いを殺したり、プッシュバントをする必要はないと僕はないと思うのです。
打球の前後よりも大事なのはコースです。
野手がいないところにボールを転がせば、間違いなくランナーは次の塁に進めます。そのためにも、相手ピッチャーのフィールディングのうまさ、状況に応じてファースト、サードのどちらが突っ込んでくるか、はたまたどちらもなのか。
こんなところを見ておくべきですね。
軟式で初心者がバントをするためのコツは、コースを決めてただ当てる、これだけです。
軟式でバントするならこのバットを使え!
野球で使う主なバットの素材は
- 金属
- 木製
- (高反発)ポリウレタン
ですよね。硬式をしている人から見れば「ポリウレタン?」でしょう。ミズノが出すバットでは「ビヨンドマックス」と名付けられています。
軟式専用のめちゃくちゃ飛ぶバットですね。
飛距離が伸びるので多くの軟式プレイヤーに愛されているバットで、初心者でも簡単に飛距離を出すことができます。
が、それがバントであだになります。バントで一番やってはいけないことがフライアウトになることです。
これをやればランナーが進めないどころか、ゲッツーになることもあります。上手なチームだとわざとフライを落とし、ゲッツーを取りにいく高等技術も持っています。
ゴム素材のバットでは金属なら小フライでグランドに落ちていた可能性のある打球がフライアウトになる可能性を引き起こします。飛びすぎるがゆえです。
だから「ここは監督ならバントを出す」という場面では、バット選びが重要でバントを成功させるコツになります。確実にバントの場面ならば金属を使った方がよっぽど勢いを殺せるバントができるので試してみてください。
軟式ならではのあるあるです。
そういえばこの前、バントなのに自分でもびっくりするぐらいのフライが上がったな。
めっちゃ飛ぶのがゴム素材バットの売りだからね。バントの打球ですら飛ぶよ。
バントのコツその3:マインド(ゾーンを広く持て)
バントが「怖い」はさきほどの基本の構えを徹底し、バントに自信がつけばすぐに消えます。
上手なバントをしようとせず、バットに当てる話もしました。マインドとして必要なことがもう一つ。
ストライクゾーンを若干広めに設定することが大切です。
え?ギリギリでもボールは見逃した方が良いのでは…?
そう思うのも当然です。しかし、広めに設定しておかないと、このようなことが起きる可能性が高まります。
ランナーは「ストライクだ」と思って飛び出す
そのままランナーアウトです。単純に言えばランナーのミスなのでバッターには関係ありません。
しかし、バントのサインが出たときにランナーはなるべく早くスタートを切りたがります。
自分が進塁することが大事だからです。とくに初心者ランナーは変に責任感が強く、このミスを起こす可能性が高いです。
だから広めにストライクゾーンを設定してランナーとの意識レベルを合わせてあげましょう。
ランナーからはストライクゾーンがよく分かりません。だからストライクっぽく見えたら、スタートしたがります。
また、当てて転がしさえすれば良いので、ヒットを打つよりは簡単です。
引用:http://blog.livedoor.jp/rock1963roll/archives/3943535.html
さきほどお見せしたこの川相選手のバント。
キャッチャーのミットの位置から察すると、膝よりも下のためボールになる球だと思われます。それでも川相選手はバントしていますね。
また、特に低めのボールは地面が近いため当てれば転がる可能性が高いです。ランナーのミスをカバーしてやるためにも
【100発100中】バントのコツ:軟式編。軟式のバントは簡単!:まとめ
バントは特に弱者が強者に勝つために、必要な技術の一つです。またコツを押さえておけば、将来高校や大学でプレーをする際、バントをするチームであったときでも困りません。
バントのコツの一つは、基本的な構えを徹底すること。
- バットと目線の位置
- 膝や腰の高さ
- バットを持つ手の位置や握り方
を変えれば、バントがうまくなります。
軟式ならではのバントのコツがあります。無理に勢いを殺したり、プッシュバントを仕掛けるよりは、コースに決めるバントを心掛けると、確実に転がせます。
バントをするときに「広めのストライクゾーン」を設定することが、ランナーのミスをカバーするコツです。