少年野球では、よく「声を出せ」と指導者に言われます。
だから「こーーい」「バッチがんばれー」などと、子どもが騒ぎます。
正直、その声出しに意味はありません。
さらに、声出しにはマナー違反と言われるものもあるようです。
大阪桐蔭とクラークの一戦での件についても触れながら、声出しについて考えてみましょう。
少年野球や高校野球で声を出す意味
バアアアッチこいや~~~
(あいつ本当に声でかいな~)よし、こーい!(ああ、ぶっちゃけ声出すのしんどいんだよな)
おーい!声が出てないやつがいるぞー
よっっしゃーーーーー!打ってこーい!!(しんどーーーーい、声出しって意味ないんじゃないの?)
声出しが正直いやだ、と思ったことのある野球人がほとんどなんじゃないでしょうか。
正直「意味ない」「しんどい」「だるい」と思ったこともあるはずです。
先輩から「声出てない」と言われる瞬間の恐怖と面倒くささときたらもう…
そもそも声出しは意味ないんじゃないか、とも思いますが、結論から言うと声出しには意味があります。
ただし、きちんと目的を踏まないと、ただの体力の浪費となります。
少年野球や高校野球で大きな声を出すことの効果
大きな声を出すことの効果がこちらです。
- 身体がすぐに動く状態になる
- 緊張感がやわらぐ
- 連携をチーム全体で確認できる
- 観客が騒いでいても、指示を伝えられる
- 日々一生懸命声を出すことで声帯が太くなる
びっくりさせられたとき、人は声を出しますよね。
危機的状況に対して逃げる・戦うなどの行動をしなければなりませんが、その時身体は硬直します。
この硬直状態(交感神経優位)から、緊張をとく(副交感神経優位)ために、声を出すのです。
つまり、声を出すことは「すぐに動ける状態作り」とも言えます。
もちろん、キャッチャーの後逸後のボールの位置を知らせたり、ランナーの動きを全体に伝えたりするときは必須です。
みんな騒いでいる中で指示を伝えなくてはいけません。
だから、声を出すことには意味があるのです。
意味のない声出しもある
ただ、中学野球の監督として様々なチームを見ている中で、「無駄に(意味のない)声出し」をしているチームも見ます。
その特徴がこちら。
- 守備中の声出しが「こーい」「ナイスピッチ―」「ピッチャー楽に」と種類が少ない
- 声をのばしている「~」時間が長い
意味のない声出しの代名詞が、中身のない(情報のない)声出しです。
とにかく種類が少ない。もっと、状況、何かあったときの動き、確認やること盛りだくさんです。
とくに守備中は。
攻撃だって、ランナーにはSBOのカウントを逐一伝えるべきでしょう。
情報を共有し合うことが声出しの本当の意味と思ってください。
「ピッチャー楽に」は、ピッチャーから思うと「わかってるわ」となるそうです。
大きな声で、情報を共有し合う声出しを心がけましょう。
⚾野球における声出しの意味⚾
1つ目:
選手同士が確認し合う声出し
⇒間違いを恐れず発言し、お互いを助け合う意識が大切!2つ目:
力を発揮するための声出し
⇒ある程度の興奮状態の時こそが、一番力を発揮できる!#草野球 #社会人野球 https://t.co/mYf5YlxFqE— TAIBO⚾【公式】 (@taibo_jp) October 18, 2022
大阪桐蔭高校とクラーク国際高校戦でクラークの佐々木監督が激怒
2022年11月20日明治神宮大会。
大阪桐蔭とクラーク戦で、クラークの佐々木監督から「いつまで声を出しているんだ」というクレームが入りました。
ルール上は問題ありませんが、確かに守る側から見れば、異を唱える気持ちも分かります。
セットに入った投手がいる中での声出し
クラークの投手が投球動作に入っていてもなお、大阪桐蔭のベンチから「ワーワー」と声が出ていたということです。
ルール上では、投球動作中に声を出してはいけない、ということはありません。
その点、大阪桐蔭の西谷監督も
何かを誘発するような、(走者が)『逃げた』、球種を伝えるとかはダメだと思っている。新チームで一生懸命に声を出しているだけ。それもダメなら僕の勉強不足です
と、声出しそのものはダメだと言ってはいません。
そもそもやってはいけない声出し(ルール明記分)
公認野球規則では
監督、プレーヤー、控えのプレーヤー、コーチ、トレーナーおよびバットボーイは、どんなときでも、ベンチ、コーチボックス、その他競技場のどの場所からも、次のことをしてはならない
とあり、次のことを禁止事項としています。
- 言葉、サインを用いて観衆を騒ぎたたせるようにあおったり、あおろうとする
- どんな方法であろうとも、相手チームのプレーヤー、審判員または観衆に対して、悪口をいったりまたは暴言を吐くこと
やはりルール上の問題はありませんが、変なやりにくさを感じさせる声出しは、できれば控えたいところ。
今回の騒動は、大阪桐蔭が完全に悪いかというとルール上問題ありませんし、一方クラークの監督さんの主張も分からないでもないです。
よく見るマナー違反の声出し
ランナーがいる状態で、攻撃側ベンチやランナーコーチが「走った」や「逃げた」と、盗塁を示唆する声を出すこともありますよね。
しかし、よく考えるとこの声かけは味方にではなく、相手投手に対する声かけです。
そこには「投手をかく乱してやろう」という意志があり、プレーでない部分の行為なので、好ましくはありません。
この声出しは、マナー違反なので監督としてはやめさせた方が良いでしょう。
どの人にどんな種類の声をかける?
声出しは大切だけど、意味のないものもあって、しかもマナー違反の声出しもある。
では、どんな声出し・声かけをすれば良いのでしょう。
基本的には、味方に対するものはオールオッケーだと思ってください。
もちろん相手投手がセットに入っていても、味方なら大丈夫でしょう。
その中で、バリエーション豊富で意味のある情報共有を行いましょう。
投手に対する声かけ
投手に対して声をかけるのには、性格も気にしなければなりません。
できるだけ、投手の気持ちが乗るような声かけが必要です。
意味のある声かけ
- 誉め言葉(例:ボール走ってる!、良いコースだ!)
- ランナーのリード幅(あまりうるさいと嫌がる投手も)
- 守ってやるという意気込み
- バント処理の範囲(とくにサード・ファースト)
リード幅以外は、内野手であればできるだけ目を見て「伝えてあげる」とよりよいです。
投手が安心します。
意味のない声かけ
- ストライク・ボールのカウント
- 気持ちのこもってない「楽に」
アウトカウントは良いですが、ストライク・ボールのカウントは、野手よりよっぽど投手の方が気にしています。
ボール3などは、プレッシャーになる可能性があるので改めて伝えない方が良いです。
前述しましたが、安易な「楽に」の声かけは、投手をいらだたせます。
一球たろうの高校時代、エースピッチャーがこれを言っていたのを聞いて、驚きました。
野手しかしていない人にとっては、分からない領域ですね。
野手に対する声かけ
とくに少年野球なら、まだ初心者が多いのも事実です。
初心者でも思い出せるよう、基本的に野手は情報共有、状況の確認を優先させましょう。
強いチームほど、この声かけが多いです。
意味のある声かけ
- SBOとそのポジションに飛んだらどこに投げるか
- ランナーの位置と足の速さ
- 打者のスイングのクセや飛ぶ方向の予測
- バント・エンドラン・盗塁しそうな雰囲気
- 点差やイニングから考えられる「許容できる失点」
野手に関しては、「こーい」以外の状況の伝達なら何でもありです。
SBOや盗塁しそうな雰囲気は、当然投手も聞いておりプレッシャーがかかるのではと思いますが、野手に言う場合投手は気にしていません。
むしろ、野手の動きの確認のためには必須です。
盗塁ならどちらがベースカバーに入るか、ショート・セカンドで話すべきでしょう。
相手が仕掛けてくるなら、バント処理について投手と話す必要があります。
意味のない声出し
「声かけ」というと、野手に関しては気付いたこと・何かの状況であれば何でも良いです。
しかし、「声出し」は意味のないものがあります。
- 誰も鼓舞されない「こーい」
- 思ってもいない「ナイスピッチ」などの誉め言葉
簡単に言うと、野手が出すべき声は「誰かが反応したくなる声」です。
同じ「こーい」でも、誰かが「あいつ声でけえ」と思えば、それは意味のある声です。
とにかく味方にも、相手にも響かない声出しは即刻辞めましょう。
体力の無駄遣いです。
打者に対する声かけ
打者に対する声かけは、何をしてほしいのか、一球ごとに変わる状況を伝えたいですね。
また、打者の悪い癖が出ないように、アドバイスすることも大切です。
意味のある声かけ
- イニングやSBO
- ゴロや犠牲フライ、打球の方向などの「今欲しい打球」
- スイングの悪い癖・心がけておくべきマインド
とくに打者にとっては、一球一球求められることが変わります。
同じアウトでも、進塁打がほしいときがあれば、外野フライがほしいときもあります。
2ストライクになれば、三振しないためにおっつけて打つ、反対方向を意識するなど、普通とは違うスイングも必要でしょう。
打者によっては、悪い癖が出ないようにアドバイスをすることも必要です。
初心者は、サインを見忘れることも多々あります(これには本当に苦労した記憶が…)。
意味のない声かけ
打者の場合、比較的意味のない声かけは少ないです。
投手の場合イラつかせてしまう「楽に」も、打者に対しては、マイナスに受け取られることは少ないでしょう。
ただ、「バッチがんばれ」(一球たろうの監督する地域の少年野球でよく聞く)は最悪です。
そもそも「がんばれ」とは何なのでしょうか。
打者に対しては、個別具体的なアドバイスが効果的な声かけです。
そのような声かけは、チームメイトをよく見ていないとできません。
選手一人ひとりが、互いにアドバイスをできるようになれば、チーム力アップにつながります。
走者に対する声かけ
走者は、誰よりもSBOが分かっていなければなりません。
とくに初心者は、「ランナーが詰まっている」ことや「ツーアウトでバットに当たったらゴー」が分かりません。
意味のある声かけ
- SBOと打球に伴う動き
- リード幅の大小
- ピッチャーの牽制の速さ・タイミング
- 悪送球の場合やランナーが見えないところのボールの位置
ツーアウトなら当たったらゴー、ランナー詰まっているならゴロゴー。
当たり前のようですが、プロでもアウトカウントを間違うことがあります。
これは確認しすぎることはありません。
チームで、「2・3塁ならゴロゴー」などと決めている場合もあるでしょう。
あとは、いかにアウトにならず、投手にプレッシャーをかけるリードを取るか。
とくにランナーコーチは、このすべてを伝えてください。そのための役割です。
悪送球やライト側の飛球など、走者が視認できないところにボールがあるなら、その位置や「ゴー&ストップ」の声かけをしましょう。
意味のない声かけ
- 投手を惑わせるような声かけ(例:盗塁していないのに「逃げた」など)
- 投手が投球モーションに入ったときの「ゴー」
- 「リーリーリー…」
投手を惑わせる声かけは、禁止されていることを先ほど確認しました。
また、意外と盗塁のサインが出ていないときの「ゴー」も意味がありません。
走者はその声を聞かずに、ちゃんと第二リードを取ります。
第二リードを取れない選手は、そもそも「ゴー」で動けるほど野球を分かってはいないです。
またその「ゴー」も、そのタイミングでないのに周りが無駄に言うと、ルール・マナー違反になるでしょう。
少年野球でよく言う「リーリーリー」は、全く意味がないので即刻やめるべきです。
今まで、どういう声を出せばよいのか分からず、「こーい」や「リーリーリー」を言っていました。「相手が反応してくれる声かけ」を目指します。
意味のない声出しをするよりも、一球ごとに変わる状況を伝え合う方がよほど効率的だ。もちろん、大きい声でな。あとは、マナー違反になるような声出しは、控えるようにしような。
少年野球や高校野球で声を出す意味とは?マナー違反の声かけがある:まとめ
声を出すことで反応速度を上げ、よりよいパフォーマンスを引き出すことができます。
その一方、大阪桐蔭とクラーク国際の試合のように、トラブルにつながる声出しもあるので、注意が必要です。
大事なことは、味方と情報共有するための声出しをすること。
常に、この状況では何があるのか、特殊パターンではないのか、チームメイトのあいつはそれが分かっているだろうか、と考えましょう。
それが強いチームがやっている声出しです。